子どもや若者への教育、経済的支援、医療・福祉の増進、環境保全の対策など、社会課題の解決や地域活性化におけるソーシャルセクターの役割は、年々多岐にわたり、重要性が高まっています。それに伴い、多様なセクターと連携しながら社会的成果をあげるための「マネジメント人材」の育成は不可欠となっています。
内閣府の全国調査では、NPO法人が安定的な経営を行う上での重要課題として、およそ7割の法人が「人材の確保や教育」を挙げています。そこで今回、非営利団体における「マネジメント人材」の採用・育成に焦点をあてた調査を実施しました。
その結果、回答した団体の多くが、人材育成のための要員や資金などのリソース不足に長年苦しんでいる実態や、非営利団体ならではの構造的な課題が明らかとなりました。持続可能な支援活動や社会課題解決のために、どのような取り組みや体制づくりが必要なのか。本調査では、数値データに加え回答者から寄せられた「生の声」を合わせて分析・考察し、今後に向けた提言としてまとめました。
ETIC.は、今回の結果を広く社会に発信するとともに、非営利団体の関係者をはじめ、民間企業や財団、行政機関などステークホルダーの方々と連携しながら、具体的な施策や改善につなげていくことを目指しています。
調査の概要
調査対象: 日本の民間非営利団体(NPO法人、一般社団法人、一般財団法人、公益法人)
調査時期: 2024年11月13日(月)~12月12日(金)
有効回答数: 144団体
調査報告書の全文は、こちらからご覧いただけます。
「非営利団体のマネジメント人材育成」に関する実態調査レポート 「ひとへの投資」と社会課題解決
URL: https://file.etic.or.jp/eticreport202502.pdf
本調査は、アポロ財団による資金支援を得てETIC.が実施しています。

また、3月13日には、本調査レポートの巻末で対談インタビューをしていただいた新公益連盟共同代表・李炯植氏とコモンライト合同会社代表・宮崎真理子氏をお招きして報告会を開催しました。当日は調査に協力してくださった非営利団体の経営者やマネージャーのみなさま約60名の方にご参加いただきました。
当日の参加者のお一人から、そもそも”育成する”ってどういうことなのか?の共通認識ができるとよいのではないか、という問いかけがありました(議論を深めてくださりとても感謝です)。それに対して、マネージャー成長支援プログラムのカリキュラムデザインをリードしている宮崎さんから、プログラムが大切にしている考え方を共有していただきました。
『「育成」という言葉には、”できる人ができない人を育てる”という印象がありますよね。そもそもなぜ人の育成が必要なのか?といったら、私たちNPOはありたい社会の実現に向けて事業を作っていますが、その事業は人が作っているわけですね。ロボットとかではなく。なので人の成長がイコール事業の成長だし、事業が成長することはビジョンの実現に近づくこと。そのために人に働きかけることを育成と呼んでいます。
だから、「育成」というよりも「共育ち(ともそだち)」ではないかと思っています。わたしはよく「システム」と呼んでいるのですが、マネージャーに何かの知識を与えればその人が成長するわけではなく、その人を変えるには、その周りにいる全員が変わって、前提のシステムが変わる必要があるんですよね。
プログラムの参加者には、「上司と話してきてください」という課題を出しています。上司も何らかのマネージャーの成長や変化を感じているはずだし、その変化に触れて自分自身も変容していく必要があることに気づいていくでしょう。』
人が育つには、その周りにいる人たちも含めたシステムが変わっていく必要がある。私たちはこの信念と、調査結果から得た生の声をもとに、マネージャー成長支援プログラムをより良い形に進化させていきます。
